シンガポールの庶民が暮らす公営住宅、HDB。
HDBとは、Housing & Development Board(住宅開発庁)の略で、シンガポール政府が1960年代に国内のスラム街を一掃して安価なマンションを建設して国民を移住させたのが始まりです。
国営住宅というだけあって、HDBにコンドミニアムほどの華やかさはなく、敷地内におしゃれなプールやジムなんかもありません。
でも『シンガポール人の約8割が住んでいる』と言うだけあって、そのメリットもたくさんあります。
のりこ
目次
シンガポールの公営住宅HDBは日々新しくなっている
HDBと一口に言っても、その地域や築年数によって、間取りも外観も家賃も大きく異なります。
上の写真はブログ用無料画像のサイトからとったものですが、このように平面に各階の家のドアが一列に並んでいるタイプはおそらく築25〜30年ではないかと思われます。
このタイプの築年数を重ねたHDBの中にはかなり老朽化が進んでいるものもあって、シンガポール政府が計画的に『アップグレード』と呼ばれる修復・修繕・改装工事をやっています。
アンディ
HDBのアップグレードってどんなことをやっているの?
このHDBのアップグレード、具体的にどんなことをやっているかは以下の通り。
- エレベーターがすべての階に止まるようにしたり(古いHDBでは3階毎にしか止まらないところが多かった)
- 廊下や階段など共用部分のペンキを塗り直したり
- 窓だったところを強制的にぶち抜いて微妙な大きさの小部屋を一つ追加したり
- 共用部分をオシャレにしてみたり
- 老朽化したコンクリートを打ち直したり塗り直したり
のりこ
こんな豪華なHDBもあります
とにかく目覚ましい変化し続けているシンガポールですが、HDBも様変わりしています。
『HDB=公営住宅=質素・シンプル』という考え方はもう古い認識。
ここ10年くらいで、この写真のような超高層・高級HDBがどんどん増えています。
これくらいのレベルになると、HDBといえども賃貸家賃はコンドミニアムと大差ないようです。
これも各物件によって違いはありますが、屋上階に有料の展望フロアがあるところもあるそうです。
シンガポールの公営住宅HDBの悪いところ
それではシンガポールのHDBならではの『悪いところ』を赤裸々にご紹介します。
HDBの悪いところ① 古いHDBには虫などがたくさんいる
シンガポールは赤道直下の常夏の国ですからね、そりゃ出ますよ色々と。
何が出るかというと、以下のような生き物が出てきます。しかも家の中に、です。
- ヤモリ
- ゴキブリ
- あり
- 蜘蛛
暖かい地域ならではのスタンダード。
シンガポールのHDBで暮らして行くにはこれらと共存していく覚悟が必要です。
なぜこいつらが家の中に入ってくるかというと、多くの古いタイプのHDBではダストシュート(ゴミを階下のゴミ置き場に直接投げ捨てる入り口)が家の中に設置してあるため、そこからいろんなものが入ってきてしまうというシステム。
アンディ
ちなみに私がシンガポールからの帰国を決めた要因の1つにはこの『ヤモリ』の存在があったことは否定できない事実。

しかし新しいHDBやコンドミニアムではこいつらが出てくる確率がグッと低くなります。
HDBの悪いところ② バスタブなし、水圧も弱い

引用元:https://www.businessinsider.sg
基本的にHDBにはバスタブはなく、シャワーがトイレと同じ空間に設置されているタイプのバスルームが主流です。
そしてその理由は諸々あるようですが、なぜかどこもシャワーの水圧はめちゃ弱く、高層階になればなるほど弱くなるという噂です。
アンディ
ちょっと前まではトイレとシャワーが近すぎて、シャワーを浴びるとトイレットペーパーがしなしなになってしまうなんてこともありましたが、
最近ではバスルームのデザインもHDBのオーナーがホテルのようにオシャレに改装するケースがかなり増えてきたようです。
HDBの悪いところ③ 全部の部屋にエアコンがあるわけではない
シンガポールで物件を探す時に必ずチェックしなければいけないのが『エアコンの有無』。
日中は毎日30度越えも珍しくない熱帯の国だけあって、エアコンがないと朝から汗だく、寝るときも汗だくということに。
ところがシンガポールのHDBの場合は、「エアコンあり」と書いてあってもよく見ると寝室の窓に1個だけ「冷風機」が取り付けてあるだけだったりするので注意が必要です。
のりこ
またリビングにはエアコンがついていないHDBも多く、それでいて換気扇もない家もあるので、基本的に寝室以外はいつも窓を全開にしておかないと暮らせない状態になってしまうんです。
シンガポールの公営住宅HDBの良いところ
シンガポールのHDBの悪いところばかりを知ってきっと暗い気持ちになったと思うので、
ここからは『良いところ』に目を向けてみましょう!
実際にシンガポールのHDBに7年間暮らしてきた経験からわかった、『HDBの良いところ』をご紹介します。
HDBの良いところ① HDBの周辺施設が充実している
シンガポール国内ほとんどのHDB団地の周りには、『コーヒーショップ』と呼ばれるローカルフードの飲食店、スーパー、公園、コンビニ、MRTの駅、バス停などが揃っています。
シンガポールでも指折りの美味しいお店がこういう郊外のHDBの階下にあったりもするのがシンガポールの面白いところ。
シンガポール人は『ここの〇〇が美味しい』と聞けばタクシーを飛ばしてわざわざそこに食べに行ったりもします。
HDBの良いところ② コンドミニアムと比べると家賃はかなり安め
コンドミニアムは私設、HDBは公設。
シンガポールに駐在する外国人やシンガポール人の中でもわりと裕福な家庭はコンドミニアムに暮らしていますが、一般的な家庭や現地採用で働く外国人はHDBに住んでいるケースがほとんどです。
もともと国土が小さく物価が世界一とも言われるシンガポール。コンドミニアムを買おうと思ったら億を超えるのはもはや当たり前のレベル。
そこに来てHDBはシンガポール国民のために国が安価で住まわせるよう作られたものなので、価格はかなり低くはなります。(と言っても日本よりは断然高いです)
HDBを借りる場合も然り。
コンドミニアムの場合はレンタルしようと思っても月々の家賃が50万円以上という物件も多い中、HDBの場合ならその半分かそれ以下と思ってOKなんです。(地域や築年数、間取りによって異なります)
のりこ
HDBの良いところ③ 音が響かない!
シンガポールのHDBはがっちりとコンクリートでできているため、集合住宅とはいえ上下左右の隣人の音が全然気になりません。
のりこ
小さい子どもが家の中を走り回る様子もなんども見かけましたが、飛び跳ねても足音は分厚いコンクリートに吸収されて同じ部屋にいても聞こえないくらいです。
日本のような近隣との音トラブルもほぼゼロなので、わりとストレスフリーに生活できます。
結論:お金が大丈夫ならコンドミニアムが快適に決まっているけど、そうでないならHDBでも十分楽しく普通に暮らせます
私だって、お金に余裕があるならコンドミニアムに住んでいたと思います。
しかし現地採用でしかもホテル勤務だった私のお給料は、そこまで派手なものではありませんでした。
選択肢としては、コンドミニアムを数人でシェアするというものもあり、実際多くの現地採用の日本人たちはそうすることでより綺麗で快適なコンドミニアムに住むことを実現させていました。
ただ私の場合は、半年のホテル暮らしでプライベートゼロ生活に疲弊しきっていたため、とにかく引っ越しの第一条件は「一人暮らしができるところ」でした。
のりこ
その数年後、家賃が劇的に値上がりして状況は変わってしまうことになるのですが、それまでは一人でのんびり、そこそこ快適な日々を送ることができました。
また、私にとってHDBに住んで一番よかったと思える点は、
シンガポールの庶民の暮らしと密接に関わることができた
ということです。
HDBには当然シンガポール人の一般家庭の人たちが住んでいるので、私もお隣のおばあちゃんたちにはとても親切にしてもらいました。
HDBに住むことで、きっと観光などではみられない、古き良きシンガポール人の穏やかな暮らしを垣間見ることができたのは私にとってのかけがえのない財産です。
現在シンガポールで、HDBを借りるか高いけどコンドミニアムに住もうか悩んでいる人に、少しでも参考になれたら嬉しいです。
▽こちらの記事も読まれています▽




コメントを残す