シンガポールに住んでいると頻繁に見聞きする言葉、【キアス】。
日本人には聞き慣れない言葉ですがそれもそのはず、キアスはそもそも中国福建省の言葉で、典型的なシンガポール人の特徴を一言で表すユニークな言葉なんです。
今回の記事では、シンガポールに滞在する上で知っておいた方が良いキアスなシンガポール人たちについて、実体験などを含めてご紹介したいと思います。
目次
シンガポール人の特徴とも言われる【キアス】とは?
ではこの【キアス】とは一体なんなのか。
そもそも中国人がシンガポールに移住するときに持ち込んだもので、ざっくり言うと、シンガポール人特有の、どんなことにおいても『負けず嫌い』とか『なんでも張り合う』といった性格のことをいいます。
では実際にキアスな言動をご紹介して行きましょう。
【キアス】なシンガポール人の行動パターン
では実際にシンガポール人たちのキアスな行動にどんなものがあるのかご紹介していきます。
一口にキアスと言っても実はたくさんの性格がこの一語に含まれていますので、それらを知るだけでシンガポール旅行中に目にするシンガポール人たちの、ちょっとびっくりするような行動も納得できるようになるはずです。
①1円でも安く買いたい
キアスの始まりは「負けたくない」精神が起源ですが、実はもう少し広い意味があって、その一つに「損をしたくない」というものがあります。
シンガポール人が他人の持ち物や買ってきたものに対してなんのためらいもなく『いくらだった?』と聞くというのはもう有名な話ですが、同じものを買いに行って、聞き出した値段よりも自分が1円でも安く手に入れたら「勝ち」なのです。
②1秒でも早く着きたい
【キアス】の性格の中には、「せっかち」というものもあります。
キアスなシンガポール人の得意なことは、効率的に動くことに対してはとんでもなく頭の回転が早く、どこかに決められた時間に行くとなれば、いかに自分の時間を「損する」ことなく行けるかを考え、常に近道を見つけ出して最短の時間で終わらせます。
彼らはいつも口癖のように『ショッカッ』という言葉を使います。
これは『ショートカット(近道)』と言っているのですが、道を歩くときだけでなく、仕事の作業を省く時にもショートカットして早く達成することで「(時間を)得をする」と考えています。
③タダなら1個でも多くもらいたい
そろそろ【キアス】がどんなものかジワジワわかり始めたと思いますが、まだまだ続きます。
彼らには「悪意なくがめつい」という表現がぴったり当てはまるのではないかと思うのですが、無料や割引、食べ放題などには家族総出で協力し合い、全力で「得するため」に取り組みます。
ビュッフェスタイルのレストラン
一流、超一流ホテルがひしめき合うシンガポール。
シンガポール人の優雅な休日の過ごし方の一つに、ホテルの高級朝食ビュッフェを楽しむ、というものがあります。(ほとんどの場合は誰かに割引券をもらったから、というケースが多いですが)
優雅なはずの高級レストランも、ビュッフェとなれば一定金額で食べ放題、それはもう人の目なんて気にせずてんこ盛りのお皿を2つも3つも持っていくのがキアスなシンガポール人スタイル。
蟹や牡蠣などの高級食材は「食べなければ損」なので、自分が取った分を食べ終わっていなくてもビュッフェからなくなりそうになったら途中で取りに行き独り占めします。
またハイレベルなキアスになると、レストランに入るやいなやシェフに「この中で一番高い食材はどれ?」と確認してから、それを集中的に食べます。
お金を払った店に対してどれだけ「損」させるかが彼らにとっては「勝った・得した」ことになるのです。
ホテルのエグゼクティブクラブラウンジ
これは私の実体験ですが、私がホテルのクラブラウンジでマネージャーをしていたとき、時々週末限定のプロモーションで地元シンガポール人が割引価格でエグゼクティブクラブに滞在することがありました。
通常VIPや常連の出張者しかこないクラブラウンジですが、キアスなシンガポール人ファミリーが滞在する週末はラウンジの空気感すらも変わります。
ラウンジでは、ビュッフェ形式の朝食、夕方のカクテルアワーでそれぞれ料理とドリンクがすべて無料で用意されます。
その他ソフトドリンクやスナック類であれば終日いつでもラウンジで飲み食いできるシステム。
キアスファミリーが来ると、料理はとにかくすべての種類を食べ尽くし、もうお腹いっぱいだとしてもとにかく山盛り取ってきては家族で選手交代しながら食べ続けます。
なぜ『ロングアイランドアイスティー』なのかというと、その可愛らしいネーミングとはうらはらに、このお酒にはジン、ウォッカ、テキーラ、ラム、ホワイトキュラソーとたくさんのお酒が使われている、いわば『高コストアイテム』なのです。
無料で飲み放題なのであれば、出来るだけ高いお酒を飲まなきゃ損、出来るだけホテルにたくさんのお酒を消費させなきゃ損。それがキアス魂です。
④行列には並んでおかないと損するかもしれない
普段はとてもせっかちなキアスなシンガポール人ですが、たまに見かけるのは、特定の飲食店の前で長蛇の列にきちんと並んでいる姿。
これまでご紹介してきたキアスな姿勢から考えると、長蛇の列があれば我先にと割り込んで手に入れそうなイメージですが、そんな非常識なことはしません。
なんだったらその列に並んでいる彼ら自身、一体なんのために並んでいるのかわかっていないこともあったりするのです。
という心理で並んでいることが多いのです。
そして列がだんだん短くなってようやく自分の番がくると、とりあえず友人親戚のぶんまでごっそり買って帰ったりします。それを振る舞う時には必ず、自分がどれだけの時間並んだか、いくらで買ったかなどをしっかり自慢してから渡すのです。
⑤情報に対しても貪欲
先に述べたように、シンガポールでは他人の持ち物や買ってきたものに対して遠慮なく価格や料金を質問するのが常識です。聞かれた方もそれが当たり前のことすぎるので特にためらう様子もなく、答えたいことにだけ答えます。
キアスなシンガポール人たちは情報に対してもとにかく貪欲で、知りたいと思ったことはすぐに質問してきます。私が1番びっくりしたのは、給料の話まで堂々と悪気なく聞かれるのです。
日本人からは到底考えられないことではありますが、そんな彼らの憎めないところは、本当に限りなく「悪気がなく」聞いてくるところです。
あくまでも普通の会話の延長線上で『いくらもらってんの?』と聞かれるので、そのあまりの自然さに、思わずこちらもさらっと答えてしまいそうになります。
【キアス】が生み出した優秀な国民
ここまでキアスなシンガポール人の様々な行動をご紹介してきました。日本人の感覚では非常識とか下品とかえげつないとか、そんな風に思う人もいるかも知れませんね。
実際に私もシンガポールに住んでいる間、このキアスな行動にうんざりしてしまうことが幾度となくありました。
しかしながら、キアスであることは悪いことばかりではないのです。
その露骨なまでの「得すること」への渇望は、野心や向上心、学習意欲になって結果的に彼らのスキルにもなってきたのです。
ほぼ全員がバイリンガル/トリリンガル
何事にも貪欲なキアスなシンガポール人たち。
キアスという言葉がそもそも中国語が語源であることからもわかるように、この気質を持った人は中国系に多く見られます。
中国系シンガポール人は、ほとんどの家庭では中国語が使われていて、生まれた時から日常会話は中国語です。一歩家を出ると様々な民族が暮らしているので、家の外では英語。
そしてシンガポールの国語はマレー語なので、流暢にとまではいきませんが、彼らは少しのマレー語もできるのです。
仕事や生活におけるあらゆる場面で、一番有利になる言語をしっかり使い分けるのがキアスなシンガポール人。
キアスだろうがなんだろうが、日本語しか使えない日本人とバイリンガル・トリリンガルが当たり前のシンガポール人、国際社会で通用するのは明らかに後者ですよね。
実際にシンガポール人たちの英語は『シングリッシュ』と呼ばれる訛りの強い英語ですが、訛りが強いだけであってリスニングもスピーキングもほぼネイティブなので、欧米人と対等に渡りあえるところが最大の強みです。
より良い生活のためなら移住も厭わないフットワーク
そもそも祖父母がシンガポールに移住してきたという背景からか、シンガポール人たちは外国に移住することをとてもカジュアルに考えていて、とてもフットワーク軽くビザを取って引っ越ししてしまいます。
です。彼らはシンガポールという国で働くことがストレスだと思っており、それは「ストレスを溜めてまで仕事をしている=損をしている」ことになるのです。
もし外国で楽チンな仕事だけやっていてもシンガポールと同じような給料ならば、『楽しても同じ給料もらえる=得」という思考なので、日本のように祖国だの母国だの、そんな思い入れはありません。
まとめ
今回の記事では、シンガポール人に多く見られる独特の気質、【キアス】についてご紹介しました。
実はキアスなシンガポール人の中にもそのキアス度合いにそれぞれ個人差があるようで、キアス度の低い人が、高い人の行動を見かけると、『同じシンガポール人として恥ずかしい・・ 』と思うのだそうです。
このような気質を持ったシンガポール人。シンガポールを旅行中にこのような言動を見かけたら、「あ、これが【キアス】なんだな」と温かい目で見てあげてくださいね。
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