過剰になりすぎた日本人の『接客マナー』と『サービス精神』の結果

以前シンガポールに住んでいた私は、日本に一時帰国すると、まず最初に成田空港のコンビニに立ち寄っておにぎりや飲み物といった、ちょっとした買い物をするのが定番になっていました。

日本の接客マナーは抜群

成田のコンビニのおばちゃんは、とにかく元気ではち切れんばかりの笑顔。

支払いに小銭を出してもいいかと聞くと、

『もちろんです〜 細かいの出してください♪  こちらも助かります〜』

とまるで何か私がいいものでもあげたような口調で受け取ってくれて、笑顔で「ありがとうございました〜!」と見送ってくれる。

以前のシンガポールの接客対応はお世辞にも「良い」とは言えないレベルだったので(詳しくはこちらの記事から:シンガポールの接客マナー【劇的変化!のワケ】)、日本に帰ってくるとそんな優しい対応をしてもらえることでとても癒されていたことは間違いありません。

お客様は、、何様?

それでも、やはり最近どうしても気になるのが、その日本人の接客応対があまりにも過剰で、実際に提供しているものの価格やその従業員さんに支払われている賃金とそれが見合っていないように思えてならないのです。

私自身、日本でも海外でも長年にわたってサービス業で働いて経験してきたのですが、日本での接客マナーの徹底ぶりと言ったら海外のそれとは比較にならないほどの高レベルなものを要求されます。

しかもそれが時給800円とかでも、です。

そして私自身、スタッフを教育する立場だったときに新人さんに口を酸っぱくして言っていたのは、『お客様の立場にたった接客』とか『また来たいと思っていただける笑顔とサービスの提供』とか、とにかくお客様第一の考え方です。

さすがに「お客様は神様です」なんてことをいう人はいなくなりましたが、いまだにサービス業の現場では、お客様は「王様」くらいの立ち位置にはいると思います。

 

日本人の過剰なサービス

では現在の日本での接客がどれだけ過剰かをさらっとご紹介します。もしサービス業に従事していてこんなの普通だ、と思ってしまう人は、ちょっと自分を安売りしすぎかもしれません。

① いつでもとびきりの笑顔とフレンドリーさを要求される

どこに言っても笑顔と大きな声での挨拶は重要視されていますね。スーパーなどでは、お客さんがいなくても『やまびこ挨拶』という謎の声の掛け合いが響きわたります。

もちろんそれには「店に活気を持たせる」などいろんな意味があるのですが、マニュアル化された挨拶は時として機械的で、歓迎されている感じがしないことも。

そしてとにかく誰にでもフレンドリーにするのが良しとされていて、お客様のためなら頼まれていないことまで先回りしてサービスを施すのが凄腕店員と呼ばれたりします。

しかもそれが時給800円とかでも、です。

② お客様に対して無駄に腰が低い

そして日本人の店員さんに多いのが、バカ丁寧すぎて、ムダと言っていいほどお客様に対して腰の低い人です。どんなに理不尽な要求をされても『お客様だから何を言われても仕方ない』と下手に出て、媚び諂う態度をとってしまうのです。

日本以外の国、とくに中国系の国の接客マナーは一般的に「非常に悪い」と言われていますが、どんな感じかというと、

  • レジを打ってくれる人は座ったまま
  • 商品やお金のやり取りは片手でするのが当たり前
  • ものを食べながら応対するのだって普通
  • 小銭を出そうものなら舌打ち
  • 言葉が通じなければ露骨に嫌な顔

そんなのが当たり前の国のなんと多いことか。

たしかに「人として無礼な態度を取る」のは接客業失格です。しかし、よくよく考えてみると、日本で当然と思われていることが、本当に当然のことなのか疑問になってくるのです。

 

例えば、

  • スーパーやコンビニの店員さんが、座ったまま応対したらなぜダメなのでしょう。むしろ、長時間立ちっぱなしでいる必要があるのでしょうか?
  • お客様とのやり取りは必ず両手で、が基本ですが、片手だと粗雑に扱われたと感じるというのは本当でしょうか?

③ 親切すぎる包装

これも世界では有名な話。まるでマトリョーシカみたいに、包みを開けてもまた包み、それを開けてもまた包み、という具合でなんでもかんでも丁寧に個包装されているのが日本の製品ですね。

たった1980円の服を買ったとしても、店員さんはそれを丁寧にたたんでくれて、薄葉紙に包んでくれて、なおかつそれを透明なビニールに入れ、やっとお店のロゴの入った外袋に入れて、シールを貼って、レジからわざわざ出てきて手渡しして、お店を出るまでお見送りしてくれる。

しかもそれが時給800円とかでも、です。

完全に過剰ですね。なんだったらゴミが増えるので何の包みもいらないくらいです。海外ではわりとどんなに高いものを買ったとしても、紙袋かビニール袋にそのままたたみもせずにポンっと入れてくれるだけだったりします。

④ トイレの過剰なマナー

日本人のトイレの使い方もまた独特です。これが「マナー」なのかどうかは疑問ですが、いろんなことに過剰であることは間違いありません。

自分の「用を足す音」を他人に聞かれることで、自分も他人も不快な思いをしないよう、わざわざ騒音を出す機械が設置されているのは世界中どこを探しても日本だけです。そして、その機械がなかったり、壊れていたりするとどうしますか?

水を流して音を消しますよね。

何と不経済でエコに反する行為でしょう。こうなってくると何がマナーで何がマナー違反なのかわからなくなってきますね。

自分の「用を足す音」を隠そうとするのは本当に日本人だけです。海外のトイレでは周りの音が丸聞こえなことなんてごく当然のことです。

職場で同僚とトイレで出くわして、片方は洗面台で化粧を直している。片方は個室に入って用を足す。日本人だったら、個室に入った方は「顔見知りに音を聞かれる」ことをとても恥ずかしいと感じるので、ジャージャー水を流す。

ところが海外なら同じシチュエーションでも、笑顔で挨拶を交わした後個室に入って、盛大に音が聞こえたってへっちゃらです。何だったらちょっと力んだ声まで聞こえてきます。

日本人の過剰なサービスが生み出した問題点

① サービスレベルに見合わない賃金

日本人はその過剰なほどのサービスや、お客様に対して異常なまでの腰の低さで尽くすことが美徳と教育されてきました。しかし今、そのサービスの質に対して、賃金があまりにも見合っていないことが問題になっています。

求められるサービスの対価が安すぎるのです。

 

海外のコンビニなどでは、若い店員がやる気なさそうに携帯をいじっていて、お客さんがレジに来た時にピッとレジ打ちをして、ほとんど笑顔もないまま、ぶっきら棒にThank You、と言うだけ。

日本だったらクレームものの対応ですが、よく考えて見れば、コンビニで数百円のものを買うのに、どれだけの笑顔と、どれだけのフレンドリーさを人は求めるものでしょうか。

おそらくこのコンビニの彼も、それほどの賃金はもらっていないと考えられます。だから、もらっている額と、扱う商品の価格帯に合わせた接客レベルならそのくらいが十分、と考えても良いはずです。

② 自分を神とかんちがいするお客様

そして日本の店員とお客様の間に存在するおかしな上下関係は、お客様たちを勘違いさせてしまうのです。やっぱり「お客様は神様だよね」と。

どんなことを言っても、日本の店員たちは反論するどころかコトを荒立てないために客のいいなりになる。そしてお客様の方はどんどん横柄になって、人によっては「とりあえずゴネたらどうにかなる」という発想になっていきます。

海外では、自分の人格を否定されたり敬意を欠く言動をして来た相手には、たとえお客様だろうとはっきりと入店を断るか、場合によっては被害届を出して訴えたりすることもあります。

まとめ

現在の日本の接客マナーでは、店員とお客様との間にとても理不尽で従属的な関係が成立してしまっています。そしてそれがエスカレートすることによって、お客様側がモンスター化するケースも少なくありません。

また「お客様の言うことは、絶対」的な教えを忠実に守りながらも、へりくだってご奉仕するその対価があまりにも安すぎることで、店員はどんどん疲弊してしまうのです。

「おもてなし」の精神と、下僕のように言いなりになることは違います。店員とお客様は対等であることをお互いが再認識する必要があるかもしれませんね。

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