”NOと言えない日本人”という言葉をよく耳にします。
確かに日本人の多くははっきりと断ることがとても苦手。
その理由のほとんどは、相手が気分を損ねるのではないかという恐怖や、断ってしまうことで相手の全てを否定してしまうようで申し訳ない気分になるから。
でもそれって本当なのでしょうか?
今回の記事では、日本人がよく使う「言ってることはYESなのに本当はNOを意味する表現」と、日本人がなかなか”NO”と言えない理由について掘り下げてみます。
目次
ポジティブに聞こえるが実はNOな表現集
① またいつかお会いしたいです
日本人がよく使う「社交辞令あるあるNO.1」がこの『会いたい』発言ですね。なんだったら特に親しくない人に対しても、会話やメールを終わらせる締めの言葉のように使います。
また会いたいと言っても、本当に会いたいのであれば『いつか』という表現は入りませんよね。『いつか』という言葉が入った段階で、もうほとんど会えないことを意味してしまうのが日本語の不思議。
日本語って難しい。いや、日本語が難しいというよりは、相手との間の空気感を図るのが難しいのかもしれません。
② 近いうちに食事でもいきましょう
めったに会わない人や、とくにもう会う必要性を感じていない人によく使われる言葉です。
- 近いうちにお茶でもしましょう!
- 近いうちに飲みにでも行きましょう!
- 近々食事でも一緒に!
上記のどれをとっても、それが実現しない約束の仕方だということは日本人ならなんとなく感じ取れると思います。本当に親しい人となら、『今度は◯◯を食べに行こう』ともっと具体的なことを話すものです。
それが経験からなのか、それとも空気の流れを読む特別な能力があるのかは不明ですが、生まれたときから周りの大人の社交辞令を見聞きして育ってきたので、日本人にはそれが普通になったのかもしれません。
③ またぜひ誘ってください
これは相手の誘いを断った時に日本人が必ずと言っていいほど使う言葉ですね。
「いやー 本当は今回だって行きたかったんですけどねー!」
「これに懲りずにぜひまた誘ってください!」
こう言われたら、すべてをストレートに受け取る外国人はまた次の機会も「誘ったら喜んでもらえる」と思うので、ちゃんと誘ってくれます。
しかし当の日本人の方は(もちろん全員がそうとは言いませんがわりと大多数が)自分がそんなことを言ったことすら覚えていません。
④ また連絡しますね!
しません。
これは社交辞令で言った『会いたい』発言などに対して、相手から具体的に「いつにします?」と詰められた時に、すべてをうやむやにする時に使います。
⑤ 次はぜひ我が家にも来てくださいね〜
心にもありません。
ホームパーティなどにお呼ばれしたお宅で帰り際に必ずいうお決まりの社交辞令です。日本人同士ならまずお互いに真に受けることなく挨拶の一部として流します。
ところが言われたことは素直に受け止めるタチの外国人が相手だと、後日「で、いつ行けば良いですか?」なんて聞いてきたりするので焦ってしまいます。
ただ単純に『共感』しているだけ
これは特に日本人女性に多い行動パターンです。もれなく私もそのうちの一人です。
① 見た〜い!
例えば誰かが「とても面白い映画を見てきたんだ!」と言うと、私たちは決まって、
「え〜!!見たーい!!」
と言いますね。もちろん本気で見たいと思っている人もいますし、そんな面白い映画を見れたなんて素晴らしいね!という共感の意味で言っている人もいます。
でも実際に、「あ、じゃぁ一緒に見に行く?すぐチケットとるから」と言われたら、急に引き潮のごとくさーっと引いてしまいます。
だって、その映画は見たいけど、今は見たくないし、アンタとも見たくないからです。
② 行きた〜い!
例えば誰かが「来週、香港の夜景を見に行くんだ」と言うと、私たちは決まって、
「え〜!!行きた〜い!!」
と言いますね。完全に共感です。
人は他人から羨ましがられると、優越感を感じてちょっと嬉しくなりますよね。なので「行きた〜い!」としっかり羨ましがってあげることで相手を大きく肯定し、気持ち良くさせることができます。
しかし外国人にはこのニュアンスは一切伝わらないので注意が必要です。
私がシンガポールにいた時に、同僚の子が休暇を取ってヨーロッパ旅行に行くというので、
「Sounds great! I also wanna go there! (いいね!私も行きたい!)」
と言ったところ、その子にすごく申し訳なさそうな顔で
「Ohh Sorry.. (あー…ごめんね…)」
と、謝られました。
いやいや、そうじゃないんだ。アンタと一緒に行きたいなんて1ミリも思ってないから。ただ、「いいなぁ〜 羨ましいなぁ〜」という気持ちの表現方法なんだよ。
③ 食べた〜い!
これも同様ですね。誰かが何かすごく美味しいものや、高級なものを食べてきた。しかもその写メを見せつけられたとすると、私たちは決まって、
「え〜!!食べた〜い!!」
と言いますね。これは本当に食べてみたいと心から思って出てくる言葉ですが、「じゃぁ来週一緒に食べに行ってみる?」と言われたら、その答えは『食べてはみたいが、一緒に行く相手は選びたい』となります。
上記でご紹介した3つの例は、日本人女性の間で本当によく使われていますが、どれも具体的な日にちを詰められたら口ごもってしまうことがほとんど。
なぜはっきりNOと言わない?その理由
では日本人はどうして相手にはっきりとNOと言えないのでしょうか?
はっきり断ってしまったら相手の気分を害するという思い込み
日本人はせっかく誘ってくれた相手に対して、その申し入れを簡単に断ることに大変な抵抗を感じます。
本当はとてもシンプルにYESかNOで答えても良いのですが、それはまるで「相手の善意や好意まで無下にしてしまう」ような、そんな罪悪感に苛まれるのです。
その罪悪感は、「自分が断ったら、相手はさぞかし失望し、気分を害してしまうだろう」という恐れから来ています。
そしてさらにその恐れがどこからくるのかを突き詰めてみると、
要は、自分が断られたらイヤな気分になるので、相手もそうに違いないと思い込んでいるのです。
なので、お誘いを受けた日に別の予定が入っていればまだ「その日は別の用事が…」と濁すことができますが、ただ単純に『気のりしないから行きたくない』場合は本当に返答に困ります。
行きたくない、でも無下にもできない。そこで繰り出すすり抜け術が、
というなんともセコくて、なおかつ相手にも迷惑をかける方法に出る人もいます。
日本人よ、”NO”はTPOで使いこなせ
一見相手の気持ちを慮って”NO”と言えずにいるように見える日本人ですが、国際社会の中ではむしろ相手に失礼になってしまったり、「日本人は何を考えているのかわからない」などと言われてしまったりします。
そこで、どうしてもNOと言いにくい性質が染み付いている日本人が今後どうすべきかというと、
① 外国人相手には、どんどんNOと言おう
日本人同士なら、社交辞令がどの程度通用するのか、その空気感でわかりあえるので問題は発生しません。
トラブルになりがちなのは、対外国人の場合。なので海外にいるときや、外国人と話しをしている時のみ、”NOと言える日本人”を演じれば良いのです。
いくつか断る例文を用意しておくのも手です。参考までに私が「気のりしないから行かない」場合に使っていた断り文句は以下のとおりです。
- I’ve got something on this evening. (今日の夜は他に予定があります)
- Well, I think I should go home today.(うーん、今日は帰るわ)
- No, not today. Thanks for asking anyway.(今日はやめとく。誘ってくれてありがとう)
とてもシンプルですが、誰も1ミリも気分を害しませんので、ぜひさらっと断りましょう。
② 自分も「相手に断られること」を許してみる
これはほぼ無意識のうちに刷り込まれているものですが、
ちょっと思い出してみて欲しいのですが、例えばこちらが良かれと思ってしてあげたことに対して、相手がぶっきらぼうにNOと言って来たら、ムカッときませんか?
「断るにしてももっと言いようがあるだろう」とか思ったことはないですか?
それです。その気持ちを相手に味わわせたくない一心で、どんどん自分がNOと言えなくなっているのです。
なので、それをひっくり返してみるのです。相手から断られることが心から許せたら、自分が相手にNOと言ってもOKだと思えるようになるというワケです。
まとめ
今回の記事では、NOと言えない日本人の特徴と、その心理的原因などをご紹介しました。
日本人がNOと言わないその根底には、『相手を喜ばせたい』という気持ちがあることは間違いありません。
ただ、表面的に相手を喜ばせたい一心でYESと言っておきながら、直前でNOと言い出す日本人は、相手に不信感を抱かせてしまいます。
その場その場で状況に応じて、YES・NOをしっかり表現できることが国際社会での大人としてのマナーです。
「自分がNOということ」も「相手にNOと言われること」もきちんと受け入れて、許すところから、『適切にNOと言える国際的な日本人』になれるのかもしれません。
コメントを残す