私が住んでいたシンガポールは食の基準値がとても高く、日本食一つとっても「なだ万」や「野川」などの一流店から、大戸屋やサイゼリヤなどのチェーン店まで揃っていて、シンガポールにいながら日本とほぼ変わらない生活ができてしまいます。
その一方で、同じ日本食レストランと言っても外国人が経営するものもたくさんあります。
そこではローカルのシェフたちがリーズナブルな価格で『それなりに日本っぽい』料理を出してくれます。
しかもその中にはたまに「なんだこれ?」と笑ってしまうようなメニューもあったりして、なかなかおもしろいのです。
今回の記事ではそんな、ローカルのシェフたちが繰り広げてくれるちょっと珍しい『日本食』の数々をご紹介します。
目次
海外で出会ったユニークな日本食
今やどこの国に行っても新鮮で美味しい日本食が食べられるのが当たり前になりつつあります。
とはいえローカルの日本食屋さんで働くシェフたちは、「日本で修行をした」なんて人はほとんどゼロ。それどころか日本に行ったことのない人や、中には「本物の日本食を食べたことがない」なんて輩もいるのです。
なので彼らの作る日本食は、けっこう見よう見まねだったりします。
しかもそこにローカルのエッセンスがちょっと光っちゃうこともあって、その国の人たちの舌に合った日本食へとアレンジされています。
① 回転寿司
今や海外でも新鮮な寿司ネタが手に入る時代です。
私が働いていたシンガポールのホテルにも日本食レストランが入っていましたが、彼らも週に数回、築地市場から直接魚を空輸で取り寄せて、寿司や刺身としてお店で提供していました。
海外には回転寿司もたくさんあります。
そこで提供されている寿司ネタの中でも、とくに外国人に人気なものといえば、マグロとサーモンです。
むしろそれ以外の魚のことを知らない人が多すぎて需要が少ないのかもしれませんが、とにかく私がいたシンガポールの回転寿司では、回ってくる寿司が
マグロマグロマグロサーモンサーモンマグロサーモンマグロサーモンサーモンマグロマグロサーモン
という具合に、たった2種類の魚たちがぐるぐると回っていたのです。どうせ2種類しかないなら回転させる必要もなかろうにと思ってしまいますが、そこはプレゼンテーションのうち。
② ソフトシェルクラブ
何を隠そうこの私は、『ソフトシェルクラブ』という料理の存在を、海外に出て初めて知りました。
日本にいた時は、私の人生に一度も登場したことがなかったこのカニの天ぷら。
脱皮したての殻の柔らかいカニを天ぷらにして殻ごと食べるという代物なのですが、どうやら日本でも高級和食店などでは提供されているようです。
でもやはり帰国してから日本では一度もお目にかかっていないので、私にとってはこの料理は『海外でしか食べられない日本食』のままです。
日本人の間では認知度の低いこのソフトシェルクラブが、海外では『代表的な日本料理』というポジションを確立していることが一番の驚きです。
③ 焼うどん
日本の焼うどんを食べたことないローカルシェフが作る焼きうどんはとっても独特です。
独特と言っても、まずいワケではないのです。むしろなんだかとっても懐かしい美味しさ。この味、なんの味だっけ?と食べながら記憶を探してみると、なるほど〜。
それは、カツ丼の、カツのないバージョンのところにうどんを入れて絡めたヤツでした。『カツ丼のカツのないヤツ』がベースなので、もちろん具は玉ねぎと卵だけです。
それでも意外にもとても美味しいのです。いっそのこと『新しい焼うどん』として売り出しても良さそうなくらいでした。
④ 焼きそば
こちらも焼きそばを食べたことがないローカルシェフが作ると、中華そばではなく日本蕎麦を用いて焼きそばになっています。
見た目は「野菜炒めにざる蕎麦が混ざってしまった」みたいな感じであまり美味しそうには見えないのですが、食べてみるとこれまたあっさり塩味で、ごま油の風味が効いていてGOODだったりするのです。
⑤ お茶漬け
日本ではおばあちゃんくらいの世代の人たちが、食べ終わったご飯茶碗にお茶を注いで、茶碗をキレイにしながらお茶をすするという風習がありましたよね。
でもお店で食べるお茶漬けといえば、ご飯の上に様々な具をのせて、上品な出汁をかけて食べるのが主流です。
私が働いていたホテルのローカルシェフが切り盛りする日本食レストランでは、メニューに「お茶漬け」は載せられているものの、なんとそのシェフときたら、お茶漬けを実際に見たことも、食べたこともないというのです。
ある日ついにお茶漬けのオーダーが入ってしまい、慌てて私のところに聞きにきました。そして彼が見よう見まねで作ったというお茶漬けをみてびっくり。
白米に、緑茶をかけただけのものだったのです。
「なんか違うような気がする」から食べてみてほしいと言われて食べると、とにかく果てしなくまっすぐに、「ご飯」と「緑茶」の味しかしませんでした。
⑥ 白いままのご飯はNG
これは特にアジアの国で多いのですが、定食などでご飯とおかずがバラバラに出てくる場合、ご飯を白いままで出すのはNGだと思っているローカルシェフがいます。
ではどうやって提供してくれるのかというと、ご飯に「おかずの汁」や「カレーソース」などをかけてくれちゃうのです。
そうすることによって、たとえおかずが先になくなったとしても、まだご飯にはソースがかかっているので、なんとか残されたご飯は飽きずにかきこめる、というワケです。
とても親切ではあるのですが、その一方で「白いご飯は白いご飯として食べたい」という人にはいい迷惑です。
番外編:その国には存在しない、有名料理
ここまでは、海外でよく見かけるちょっと不思議な日本食とその食べ方などをご紹介しました。
実は日本食に限らず、この『ちょっと不思議な/ちょっと変わった◯◯料理』というのはいろんな国で同じようなことが起こっています。
① シンガポールにはない、『シンガポール風焼きビーフン』
日本や海外の中国料理屋さんなどに行くと、『シンガポール風焼きビーフン』なるものがメニューの中にあることにお気付きですか?
この「シンガポール風焼きビーフン」、どんなものかというと、普通の焼きビーフンに様々なスパイスが使われていて、要は黄色いカレー味の焼きビーフンのことを言います。
「シンガポール風」ってくらいだからシンガポール国内どこでも食べられているものと思いきや、それは大間違い。実はシンガポールのどこを探しても、シンガポール風焼きビーフンは見つかりません。
おそらく多民族国家のシンガポールのイメージから、カレー味(=インド)とビーフン(=中国)の融合、みたいな安易な感じで外国人が考案したメニューなのでしょう。それでも意外にもそれが美味しいので、外国ではとても人気なのだそうです。
② 実はナンを食べないインド人
最近は日本でもインド料理のおみせが爆発的に増えましたよね。
インド料理といえば、スパイシーなカレーと、モチモチのナン。
ところが、カレーの本場インドでは、『ナン』はそれほど多くの人に食べられてはいないってことはご存知でしたか?
その理由は簡単で、ナンを焼くためには規格外の大きな釜が必要なので、家で気軽に作って食べられるものではないのだそう。なのでインド人にとっても「ナン」はお店で出来たてを食べるものと決まっているようです。
また、出身が南インド人なのか北インドなのかにもよって、その食文化はまるで別物になります。
- 南インド→ かなりスパイシーでシャバシャバなカレー。主食はご飯。(白飯かビリヤニ)
- 北インド→ けっこうクリーミーでナッツなども使うカレー。主食は小麦粉系のチャパティなど。
このように南と北とでは大違いなのですが、私たちが日本で食べているものは、おそらく北インドの影響が強いのではないでしょうか。
まとめ
今回の記事では、海外に出てみて初めて出会う、なじみのない不思議な日本食をいくつかご紹介しました。
もちろん一流のお店で美味しいものを食べるのもいいですが、たまにはこんなローカルシェフが作る面白い日本食に挑戦してみるのも楽しいかもしれません。
また自国にはないのに、海外ではすっかりその国を代表する料理みたいな存在感を確立しているメニューもありました。
旅行先で現地のものを食べ飽きたら、ぜひその国のシェフが作る日本食にも挑戦してみてくださいね。きっと新しい発見があるはずです。
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