こんにちは、のりこです。
シンガポールでの7年間の生活の中で、私にも数人の気のおけないシンガポール人の友人がいました。そんな彼らがいつも話していたのが、彼らが子どもの頃に受けた、『まるで悪魔のような』シンガポールの学校教育。
みんな口々に言うんです、子どもなのにとんでもないストレスだったって。
独身だった私は、それを聞いて『こんなところで子育てしたら、子どもがかわいそうだ』と思いましたし、それが私がシンガポールでの結婚をやめて帰国した理由の一つでもありました。
でも今、自分に子どもができてから思うのは、『シンガポールの教育制度は確かに大変そうだったけど、それを乗り越えてきているだけあって、皆とても優秀だったな』ということ。
目次
子どもの学力は世界一!シンガポールの教育は幼稚園から
① 国をあげて教育熱心なシンガポール
シンガポールはそもそもマレーシアの先っちょにあった小さな島が独立した国。
お金を生むような資源が何もないことから、シンガポールでは『優秀な人材』が国の大切な資源になると考えられてきました。
なのでシンガポールでは、子どもに高水準な教育を受けさせて、世界に通用する人材に育て上げることが国としての第一ミッションだったわけです。
確かに私も噂レベルでは聞いていました。シンガポール国内には大学が2校くらいしかなくて、みんなそこに入るためには幼い頃からガリ勉生活を強いられていると。
② 『世界一』の学力!シンガポールの子どもたち
まさに国をあげて教育熱心なシンガポール。
その甲斐あって、PISAと呼ばれる【世界の子どもの学力調査】では、シンガポールがぶっちぎりの1位という結果になりました。
ちなみにトップ5を紹介しておくと、
順位 | 国名 | 平均スコア |
1 | シンガポール | 551.7 |
2 | 香港 | 532.7 |
3 | 日本 | 528.7 |
4 | マカオ | 527.3 |
5 | エストニア | 524.3 |
このような順位になっているそうです。意外にも日本が3位。そして教育熱心で有名な、おとなりの国韓国は、これまた意外にも9位とちょっと離れてしまっています。
③ ハンパないメガネ率
そんなわけで、今や世界一の学力を誇る教育大国になったシンガポールですが、それもそのはず、幼い頃から朝は暗いうちに学校に登校して、学校が終わっても塾だ家庭教師だと大変な勉強量のシンガポーリアンキッズたち。
Facebookなどで時折見かける友人ファミリーの写真をみて、ちょっと吹き出しそうになってしまうのが、彼らの子どもたちのメガネ率のハンパなさです。
ほぼ100%、メガネっこです。
友人の長女のバースデーパーティに集まっている同級生たちも、全員メガネでした (゚ω゚)
それがいいとか悪いとか、そういう話ではないのですが、ただあまりのメガネ具合に、みんなここまでして小さい頃から勉強しているんだな、ってちょっと切なくなってしまいました。
12歳で『人生が決まる』シンガポールの子どもたち
日本でも一時期、大変な『お受験戦争』の時代がありましたが、シンガポールも同じように、
『あの小学校のレベルが高い』ときけばそこに入学させるためにわざわざその近くに引っ越す親がいたりするくらい、【進学する学校でその子の人生が決まる】という意識が非常に強く、特に親からのプレッシャーがスゴイのです。
そのスパルタ的な教育は、なんと幼稚園から始まります。『幼稚園』と言っても彼らのそれは、日本のように楽しく遊んだりする場所ではなく、しっかり勉強を教わる、「最初の学校」なのです。
① 『悪魔のような』教育制度と”PSLE”の一発勝負
そして、私のシンガポール人の友人が『悪魔のような』と言ったシンガポールの教育制度があるのは、彼らが12歳の時に受ける【全国統一テスト】のためと言っても過言ではありません。
彼らは小学校が終わる時にPSLEというテストを受けます。その結果次第で進学する中学校のレベルが決まることになっていて、結果が良ければ大学進学コース、そうでもなければ技術系コースに振り分けられてしまいます。
② 親は白熱!子どもはストレス
PSLEを控えたシンガポールの小学生の生活は、まさに日本の大学受験さながらの勉強漬けの日々。
放課後は塾で週15時間もの時間をライティングや数学、母国語の学習に費やし、家に帰ってから深夜近くになってやっと学校の宿題に手をつけられるのだそうです。
日本ではゆとり教育が流行った時期もありましたし、なんとなく風潮としては、『褒めて育てる』とか『放任主義が優秀な子を育てる』みたいな傾向になりつつあります。
でもシンガポールでは親はそんなこと絶対言いません。
シビアなほどに子どもには『絶対に失敗してはならない!』とか『親をがっかりさせるな!』とか、日本だったらちょっと子どもがグレてしまいそうなほどのプレッシャーのかけ方をしています。
のりこ
その後の進路によって変わるライフスタイル
そんなちょっと信じられないほどストレスフルな『中学お受験』を経験するシンガポールの子どもたち。その一発勝負の試験によって決められた進路を歩んだその結果はどうなるのでしょうか。
私がシンガポールで働いていた時、2つの全く違う業種の企業で働いたのですが、そこで『超エリートコース』を歩んだチームと、『技術系コース』を進んだチームの、その両方と仕事をしてきました。
① シンガポール国内の大学に進学した超エリートたち
私が務めていた日系メーカーでは、そこで働くシンガポール人社員たちのほとんどが、かの有名な国立シンガポール大学出身者でした。日本でいうなら東大卒みたいなものです。
シンガポール国内でも『国立シンガポール大学卒』の人たちはやはり卒業後であっても周りから一目置かれます。幼い頃からずば抜けた学力で神童扱いされてきた彼らは、一緒に働いてみると本当に頭の回転が速く、優秀な人が多いことがわかります。
そしてこれはちょっとした偏見かもしれませんが、何かとても気品のあるオーラすら持っている人もいます。
そんな超エリート街道まっしぐらで育った彼らは、子どもの頃からずっと遊ばずに勉強ばかりしてきたので、大人になってもお酒を飲まない人や、人づき合いが苦手な人などがけっこう多いようです。
② シンガポールでは大学に行けなかったので海外に出る
私がホテルで働いていた時に、マネージャークラス以上の同僚や上司たちはこの②のパターンがほとんどでした。
中学受験で大学進学コースには行けたけれど、シンガポール国内の大学は敷居があまりにも高すぎて無理だった。そんな人たちが選ぶのは、『海外の大学に行く』という選択肢です。
これには多少のお金はかかりますが、それでも『大卒』というステータスは守られるわけです。
しかも、シンガポール人の最大の強みは、英語がネイティブレベルでできる、ということ。
彼らの話すシングリッシュは、発音はむちゃくちゃですし、中国語やマレー語などが混ざっている独特な英語なのですが、それはそれとして彼らは幼稚園から読み書きのすべては英語で教えられています。
なので海外の大学(英語圏)に行ったとしても、最初から現地の学生と対等に授業が受けられる英語力が備わっているのです。
③ 専門学校で即戦力に
そして私がホテルで働いているときに、フロントのスタッフやベルマン、シェフ、エンジニアなどの職種についている人たちは主に専門学校卒でした。
中学受験で『技術系コース』に進んだ彼らは、高校と専門学校ですぐに社会の即戦力になれるように実務レベルのトレーニングを受けます。
しかも実際に色々な企業や施設で数ヶ月〜1年という比較的長い期間しっかりとインターンをこなして卒業します。
のりこ
『我が人生に一片の悔い無し』というシンガポール人
12歳という若さで人生の大勝負を体験するシンガポール人たち。
実はその後にも中学卒業時と高校卒業時にも同じような統一テストがあり、それらのスコアで進める学校はどんどんしぼられていくというシステム。
彼らは学生時代を振り返ると『まるで悪魔のような』教育制度の中でそのストレスレベルは大変なものだったと言うのですが、誰一人として「あんな試験さえなければ!!』とは思わないらしいのです。
シンガポール人に生まれてしまった宿命。むしろそれ以外は知らない。そして大人になってから振り返ると、超エリート教師陣による世界トップクラスの教育を受けられていたことに、誇りすら感じているのです。
まとめ
今回の記事では、小さい頃から勉強漬けで激しい競争の中を生き抜かねばならないシンガポールの教育事情についてご紹介しました。
実際にシンガポール国内でも、12歳の一発勝負の統一テストで人生が決まってしまうシステムや、あまりにヒートアップしてしまう親からのプレッシャーに対しては、少しずつ疑問の声も上がり始めているようです。
子どもたちにとってはなかなか大変な仕組みではありますが、そうは言っても世界一の学力を叩き出し、シンガポール人本人たちもそれを誇りに思っている。
そして彼らは大人になって社会に出たら、『深夜まで勉強しなくていいから楽になった』と言うのです。学生時代に積んだ苦労は、大人になってから様々なトラブルにも耐えられる力を与えてくれているようです。
私が自分の子にシンガポールの教育を受けさせたいかと聞かれたら、やはりちょっと躊躇してしまいますが、打たれ強い子になってほしいと願うならば、崖から落とすつもりで入れてみるのも良いのかもしれません。
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