今日はふんわりした涼しいワンピースを着て出かけたら、妊婦に間違われた、のりこです。
日本にはまもなくお盆休みがやってきますね。
日本のお盆といったら、都市部で働いている人は家族を連れて帰省したり、長期の休みを利用して旅行したりと、その過ごし方は様々。
でも本来の過ごし方は、祖先の霊魂がこの世に帰ってくるのを迎え火でお迎えして、みんなで一緒の時間を過ごし、そして送り火を焚いてお見送りする、というのが古くからの習わしです。
久しぶりに家族や親戚が集まって賑やかに過ごすのが日本の『お盆』の定番ですが、それとほとんど同じイベントがシンガポールにもあるって知ってました?
シンガポールのお盆は『ハングリーゴースト・フェスティバル』と呼ばれていて、もともとは中国人が持ってきた習慣の一つです。中国語では『中元節』といい、シンガポールの他にも中国本土や香港、マレーシアなどでも行われています。
でも、日本のお盆よりもちょっとだけ『こわい』のがシンガポールのハングリーゴースト・フェスティバルなのです。
目次
シンガポールのお盆、ハングリーゴースト・フェスティバル
シンガポールに住んでいると、この時期よく耳にする言葉があります。それは、
『7th month』(セブンス・マンス)』(第7番目の月)
というもの。このセブンス・マンスというのは中国カレンダーの7番目の月(=旧暦の7月)という意味で、中国の暦の中でも特に『縁起の悪い1ヶ月』とされています。
この1ヶ月間にもわたって続く『セブンス・マンス』の間、シンガポール人たちは自分の行動にとても慎重になります。
のりこ
そしてその最強に縁起の悪い月であるセブンス・マンスに行われるのが、『ハングリーゴースト・フェスティバル』という、死者の霊を供養するお祭りです。
① 時期と期間
ハングリーゴースト・フェスティバルは毎年旧暦の7月1日から始まり1ヶ月間続きます。旧暦なので、その年によって微妙に日にちは変わりますが、だいたい毎年8月に行われています。
旧暦7月1日に地獄の門が開き、そこからの1ヶ月間は、あの世から戻ってきたゴーストたちがあちこちを徘徊する期間になるのです。
そして、そのうちの1日が『ゴーストデー』と呼ばれ、その日はこの世に帰ってきた死者たちの魂と一緒にみんなで過ごす日とされています。(2019年のゴーストデーは8月15日だそうです)
② 意味・目的
日本のお盆では、主に自分の祖先の霊を迎えて供養をするのですが、シンガポールの『ハングリーゴースト・フェスティバル』の場合は違います。
もちろん祖先の供養も兼ねてはいるのですが、メインとなるのは基本的に『他人の霊』です。
そもそもなぜ帰ってくるゴーストたちは『ハングリー』なのか?ちょっと不思議ですよね。
それもそのはず、上記でさらっと書きましたが、
旧暦7月1日に門が開くのは『地獄の門』なのです。
つまり、生前悪い行いをした人や、身内の誰にも供養してもらえない孤独な霊たちが、この1ヶ月間だけこの世に戻ってきて徘徊できるというのです。
そしてそれらの霊はふだん誰にも供養してもらえていないため、お腹がペコペコなんだとか。
なのでシンガポールではこの時期、道端にたくさんのお供えものが置いてあります。
③ 供養の方法

ハングリーゴースト・フェスティバルのお供え物。道路や団地の入り口などに祀ってあります。
ハングリーゴースト・フェスティバルの時期になると、シンガポールは街中に線香やお供え物を燃やした煙のにおいが漂っています。
お腹をすかせた霊たちは時々悪さをするという言い伝えから、シンガポール人たちは皆、家の前の道路や団地の入り口に写真のようなお供え物をして、これを食べてもらうことで家族にいたずらしないように準備をします。
自分の祖先のためならまだしも、普段は地獄にいる霊たちのためにそこまでしてあげるなんて優しい習慣ですね。
ハングリーゴースト・フェスティバル中の禁止事項
さて、冒頭で『シンガポールのハングリーゴースト・フェスティバルは日本のお盆よりちょっとだけ怖い』とお伝えしましたが、それについて詳しく説明したいと思います。
ハングリーゴースト・フェスティバルの期間中というのは、
さまよえる腹ペコな死者の霊たちが街中を徘徊しているの期間
でもあるので、私たち生きている者には、その間十分に気をつけなければいけないルールがあります。
① お祝いごと(結婚、婚約など)は延期を
中国人の家庭では、ハングリーゴーストがうろついている期間中におめでたい行事を入れるのはとても縁起が悪いとされています。ハングリーゴーストのいたずらの仕業なのか、その月に結婚式をあげると何かしらのトラブルに見舞われたりすることもあると言われています。
実際に私がシンガポールのホテルで働いていた時も、8月(旧暦7月)はホテルの披露宴の予約はガラガラで、各ホテルではこの月の披露宴プランを破格で用意するなど、様々な工夫をしていました。
② 夜間出歩くべからず
これもまたシンガポール人(特に中国系)は忠実に守っています。彼らはこの月を、迷信や都市伝説レベルではなく、マナーを破れば確実に何かしらのバチが当たるものとして、かなり慎重に暮らします。
夜に出歩こうとする子どもがいれば、親は必ず『セブンス・マンス』だからやめておけ、と言います。
『陰』と『陽』を重んじる中国の文化を通して考えると、
- 暗くて寒くて静かな場所 → 『陰』
- 明るく温かく騒がしい場所 →『陽』
とされていて、ハングリーゴーストたちは『陰』の場所で最大のパワーを発揮し、逆に『陽』の場所ではその力が弱まると言われています。
なのでシンガポール人たちはこの期間は一人で暗い場所や静かな場所を歩くのは、とても危険だと言うのです。
③ 水のあるところに近づくべからず(海、川、プールなど)
海や川、プールなどの水も『陰』だと言われています。そのため8月になると中国人の親たちはプールで子どもを遊ばせません。
ハングリーゴーストの中には、自分が生まれ変わるために、生きている人を水の中に引き込んでしまう霊もいると信じられているからです。
④ 大きな買い物はするべからず(家や車など)
家や不動産、車の購入など、大きなお金を動かすのも、この時期は避けるべきとされています。また、引っ越しや海外旅行など、大掛かりな移動もしかりです。
日本でいうなら『仏滅』の日に祝い事や事始めをしない感覚と似ているかもしれません。
⑤ 家の中で傘をさすべからず
傘をさすと、ハングリーゴーストたちはその傘をシェルターだと思って入ってきて、どこにでもついてくると考えられています。
よって家の中で傘を広げることは、彼らを家に呼び込んでしまうことになるそうで、彼らは絶対にしません。
のりこ
⑥ お供えものを踏む、ぶつかる、またぐは絶対にダメ
これが一番、大切です。私もシンガポールに住んでいる間、たとえ酔っ払って千鳥足で帰った日でも相当に気をつけていました。
ハングリーゴースト・フェスティバルのお供え物は、道端に置いてあることがほとんど。なのでこの時期は足元に気をつけて歩かないと、故意ではなかったとしても、踏んだりぶつかったり、またいだりすると大変です。
聞いた話によると香港のホラー映画などでは、この「ハングリーゴーストのお供え物に何か失礼なことをして逃げた」ところから始まるものが多いということでした。
⑦ 家のドアを開けっぱなしにするべからず
シンガポールは年中暑い国なのですが、夜になるととても涼しい風が入ったりするので、玄関のドアを開けておく家庭も少なくありません。
ただしこの期間中に限っては、『家のドアが開いている』=ハングリーゴーストを招き入れているのと同じことになりますので、家に入ったらすぐさまドアを閉めるように気をつけます。
まとめ
自分のご先祖様を供養する日本のお盆とは違い、縁者のいない地獄からの霊をおもてなしするシンガポールの『ハングリーゴースト・フェスティバル』。
この時期シンガポールのチャイナタウンでは、『ゲタイ』と呼ばれるイベントが行われ、ハングリーゴーストを楽しませるための劇(中国オペラ)やダンスショー披露されています。
一般にも公開しているので8月にシンガポールを訪れる際はチャイナタウンに行ってみるのも良いと思います。
が、そのイベントのメインの観客はハングリーゴーストですので、席の最前列はすべて開けておくのが習わしです。
旅行でシンガポールに行く際は、今回ご紹介した【ハングリーゴースト・フェスティバル中に守るべきルール】をしっかりと守って、楽しく安全な旅にしてくださいね。
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